「法定雇用率を満たさなければならない」「納付金を払わないために雇用する」。障がい者雇用を、このような“義務”として捉えている企業は少なくありません。
しかし当協会は、これからの障がい者雇用は負担や義務ではなく、企業にとっての“戦力”になると考えています。本コラムでは、企業が障がい者雇用に向き合うべき理由と、雇用を戦力に変えるための鍵についてお伝えします。
法定雇用率は2.7%へ。今後下がることは考えにくい
2026年7月から、民間企業の法定雇用率は2.7%に引き上げられました。2024年4月の2.5%から段階的に引き上げられたもので、従業員37.5人以上の企業が障がい者雇用の対象となっています。
海外に目を向けると、フランスは6%、ドイツは5%と、日本より高い雇用率が定められています。これまでの流れを見ても、日本の法定雇用率が今後下がることはほぼ考えにくく、さらに引き上げられることも十分に考えられます。
人口が減る中、障がいのある方の数は増えている
日本の総人口は減少を続けています。一方で、障がいのある方の数は増加傾向にあり、内閣府の障害者白書では約1,160万人、人口のおよそ9%とされています。
つまり、働く人全体に占める障がいのある方の割合は、これからますます高くなっていきます。企業にとって「障がい者雇用に向き合わない」という選択肢は、もはやないと言ってよいでしょう。
であれば、義務として最低限こなすのか、それとも会社の戦力として活かすのか。この違いが、これからの企業の差になると考えています。
環境と関係性が整えば、力を発揮する方は多い
障がいのある方の中には、特性に合った業務、伝わりやすい指示の出し方、困ったときに相談できる関係性が整うことで、大きな力を発揮される方が数多くいらっしゃいます。
また、「自分はここにいていいんだ」「ここが自分の居場所だ」と感じられたとき、会社や周りの仲間のために頑張ろうという気持ちを強く持つ方も非常に多いです。その結果、高い愛社精神を持って長く働いてくれる存在になります。
人材の採用が年々難しくなる中で、長く、真剣に働いてくれる人材は会社にとって大きな財産です。
障がい者雇用が進まない2つの壁
では、なぜ障がい者雇用はなかなか進まないのでしょうか。当協会では、その原因は大きく「採用できない」「定着しない」の2つ、またはその両方にあると考えています。
せっかく採用しても短期間で退職してしまう。勤務は続いていても、職場の中でトラブルが起きてしまう。当協会が特に力を入れているのは、この「定着」と「職場内のトラブル防止」です。
原因の多くは「障がい特性への理解不足」
たとえば、指示を受けてもメモを取らない社員に対して、「なんでメモを取らないの?社会人として当然でしょう」と注意してしまう場面があります。
しかしその方は、聞きながら書くことが難しい特性を持っているのかもしれません。一般的な常識をもとに指導を繰り返すと、本人は責められていると感じ、周囲は「やる気がない」と受け取ってしまいます。
反対に、「無理をさせてはいけない」と腫れ物に触るように接し、ほとんど指示を出さないケースもあります。これでは本人は仕事を任せてもらえず、成長する機会も、職場での居場所も失ってしまいます。
どちらも悪意があるわけではありません。障がい特性を知らないために起きている、すれ違いなのです。
特性を理解すれば、雇用は戦力に変わる
先ほどのメモの例であれば、指示を紙やチャットで渡す、手順書を用意する、一度に一つずつ伝えるといった小さな工夫で、仕事はぐっと進めやすくなります。
必要なのは特別な設備や大きなコストではなく、本人の特性を知り、それを現場で共有することです。特性を理解したうえで雇用することが、定着につながり、ひいては会社の繁栄にもつながると当協会は考えています。
本コラムでは今後、職場で起こりやすい具体的な場面を取り上げながら、特性の理解と対応のポイントをお伝えしていきます。
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