「法定雇用率を達成できていないと、罰金があるのでしょうか」
「ハローワークから書類が届いたけれど、何をすればいいのか分からない」
障がい者雇用に関わる人事・総務の方から、当協会にはこうしたご相談がよく寄せられます。
2026年7月から、民間企業の法定雇用率は2.5%から2.7%に引き上げられ、障がいのある方を雇用する義務がある企業の範囲も、従業員40人以上から37.5人以上に広がりました。これまで対象外だった企業も含め、改めて制度を確認しておきたいタイミングです。
- 対象企業は、毎年6月1日時点の雇用状況を7月15日までにハローワークへ報告する義務があります
- 常用労働者100人超の企業は、不足1人につき月額5万円の障害者雇用納付金が発生します
- 未達成が続くと「雇入れ計画作成命令 → 勧告 → 特別指導 → 企業名公表」と段階的に指導が進みます
- 報告をしない・計画を出さないなどの場合は、30万円以下の罰金の対象になります
まず確認したいこと:自社は対象になるか
(2026年7月〜)
企業の規模
提出期限(毎年)
障害者雇用促進法では、すべての事業主に、法定雇用率以上の割合で障がいのある方を雇用することが義務づけられています。自社で雇用しなければならない人数(法定雇用障害者数)は、常用労働者数に法定雇用率をかけて、小数点以下を切り捨てて求めます。
| 常用労働者数 | 計算 | 雇用すべき人数 |
|---|---|---|
| 37.5人 | 37.5人 × 2.7% = 1.01人 | 1人 |
| 100人 | 100人 × 2.7% = 2.7人 | 2人 |
| 300人 | 300人 × 2.7% = 8.1人 | 8人 |
| 1,000人 | 1,000人 × 2.7% = 27人 | 27人 |
短時間で働く方は0.5人として数えるなど、カウント方法には細かなルールがあります。正確な人数は、管轄のハローワークや厚生労働省の資料で確認してください。
毎年必ず提出する書類:障害者雇用状況報告
対象となる企業は、毎年、6月1日時点の障がい者の雇用状況を、7月15日までに本社を管轄するハローワークへ報告しなければなりません。基準日から「ロクイチ報告」と呼ばれることもあります。この報告は、法定雇用率を達成しているかどうかに関係なく、対象企業すべてに義務があります。
障害者雇用促進法 第43条第7項/同法施行規則 第8条(毎年6月1日現在の状況を、翌月15日までに報告)
報告をしなかった場合や虚偽の報告をした場合は、30万円以下の罰金(同法 第86条第1号)
2026年6月1日時点の報告は、引き上げ前の基準(従業員40人以上、法定雇用率2.5%)で行われました。新しい基準(従業員37.5人以上、法定雇用率2.7%)で報告するのは、2027年6月1日時点の報告からです。従業員が37.5人以上40人未満の企業は、2027年7月15日が初めての報告期限になります。
また、対象企業には、障がい者雇用の環境整備や、この報告・届出などを担当する「障害者雇用推進者」を選任するよう努めることが求められています(同法第78条第2項)。
金銭面の負担:障害者雇用納付金
「罰金」と混同されやすいのが、障害者雇用納付金です。常用労働者が100人を超える企業で法定雇用率を達成していない場合は、不足する人数に応じて納付金を納めなければなりません。
障害者雇用納付金
(前年度分)
障害者雇用調整金
たとえば、年間を通じて1人不足していれば、納付金は年間60万円になります。申告・納付先は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)です。期限は翌年度の初日から45日以内、つまり毎年4月1日から5月15日までです(同法第56条)。
| 状況 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 申告しない・誤りがある | 機構が納付金の額を決定し、10%の追徴金 | 第58条 |
| 督促を受けても納付しない | 年14.5%の延滞金 | 第60条 |
| それでも納付しない | 国税滞納処分の例による滞納処分 | 第59条 |
納付金を納めても、雇用義務がなくなるわけではありません。納付金を納めていても、次に説明する行政指導の対象になります。
一方、法定雇用率を超えて雇用している企業には、超えた人数1人につき月額29,000円の障害者雇用調整金が支給されます(支給対象が月10人を超える部分は月額23,000円)。常用労働者100人以下の企業で、一定数を超えて雇用している場合は、報奨金の対象になります。
未達成が続くとどうなるか:行政指導の流れと時期
法定雇用率を達成できていない企業には、ハローワークによる行政指導が段階的に行われます。時期は労働局の資料で示されている一般的な目安で、地域や年度によって異なる場合があります。
すべての対象企業が報告。この結果をもとに、指導の対象かどうかが判断されます。
実雇用率が低い企業に、ハローワークから文書で命令が出されます。2年間の「障害者雇入れ計画」を作成して提出します(第46条第1項)。作成・提出しない場合は30万円以下の罰金です(第86条第2号)。
計画の実施状況が悪い企業に、適正に実施するよう勧告が行われます(第46条第6項)。
改善が特に遅れている企業に、企業名の公表を前提とした集中的な指導が行われます。
改善が見られない場合、厚生労働省や労働局のホームページで企業名が公表されます(第47条)。
雇入れ計画作成命令の対象になりやすい企業
一般的には、次のような企業が対象とされています。
- 実雇用率が全国平均未満で、不足数が5人以上
- 不足数が10人以上
- 法定雇用障害者数が3〜4人で、障がいのある方を1人も雇用していない
計画書には、計画の始期と終期、雇い入れる予定の人数とそのうちの障がい者の数、事業所ごとの予定数、計画終了時の見込みなどを記載します(同法施行規則第9条)。
企業名公表の判断基準
労働局の公表資料では、公表の判断基準として、実雇用率が前年の全国平均実雇用率未満であること、または法定雇用障害者数が3〜4人で雇用している障がい者が0人であることなどが示されています。
報告から企業名の公表までは、数年単位の時間がかかります。裏を返せば、途中のどの段階でも、雇用を進めることで状況を改善できるということです。
ほかにも知っておきたい義務と罰則
| 義務の内容 | 対象 | 違反した場合 |
|---|---|---|
| 障害者雇用状況報告(第43条第7項) | 常用労働者37.5人以上の企業 | 30万円以下の罰金(報告しない・虚偽) |
| 雇入れ計画の作成・提出(第46条) | 作成命令を受けた企業 | 30万円以下の罰金(作成しない・提出しない) |
| 障がいのある方の解雇の届出(第81条第1項) | 障がいのある社員を解雇する企業 | 30万円以下の罰金(届出しない・虚偽) |
| 障害者職業生活相談員の選任(第79条第2項) | 障がいのある方を5人以上雇用する事業所 | ― |
| 障害者雇用推進者の選任(第78条第2項) | 常用労働者37.5人以上の企業 | 努力義務 |
障がいのある社員を解雇する場合は、その旨をハローワークに届け出なければなりません。本人の責めに帰すべき理由による解雇などは除かれます。また、障がいのある方を5人以上雇用している事業所では、所定の講習を修了した人などの中から障害者職業生活相談員を選任し、職業生活に関する相談や指導を行わせる必要があります。
年間スケジュールのまとめ
- 4/1〜5/15障害者雇用納付金の申告・納付常用労働者100人超の企業(前年度分)
- 6月1日障害者雇用状況報告の基準日この日時点の雇用状況を集計
- 7月15日障害者雇用状況報告の提出期限本社を管轄するハローワークへ
- 報告の後雇入れ計画作成命令実雇用率が低い企業へ(翌年1月からの2年間の計画が一般的)
- 1年目12月適正実施勧告計画の実施状況が悪い場合
- 計画終了後特別指導 → 企業名公表おおむね9か月の特別指導の後、改善がなければ公表
数字で見る、障がい者雇用の現状
厚生労働省の「令和7年 障害者雇用状況の集計結果」(2025年6月1日時点)によると、民間企業で働く障がいのある方は704,610人で、22年連続で過去最高を更新しました。実雇用率は2.41%です。
「あと1人」の企業が多い一方で、最初の1人を迎えられていない企業も多いことが分かります。法定雇用率の引き上げにより、この状況に当てはまる企業はさらに増えると考えられます。
罰則を避けるための「数合わせ」では続かない
法定雇用率の達成を急ぐあまり、職場の準備が整わないまま採用を進めると、採用した方が早期に離職し、また未達成に戻ってしまうことがあります。採用のたびに現場が疲れ、「障がい者雇用はうまくいかない」という印象だけが残ってしまうのは、企業にとっても、障がいのある方にとっても残念なことです。
大切なのは、採用した方が長く働き続けられる職場をつくることです。そのためには、障がい特性を理解し、特性に合った仕事の任せ方や伝え方を工夫できる人が社内にいることが欠かせません。
当協会は、法定雇用率を「守らなければならない数字」としてだけでなく、障がいのある方が戦力として活躍する職場づくりのきっかけとして捉えることが大切だと考えています。


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