2026年7月、民間企業の法定雇用率は2.7%に引き上げられました。2024年4月に2.5%になったばかりで、「また上がったのか」と感じた人事・総務の方も多いのではないでしょうか。
法定雇用率は、1976年に1.5%で義務化されてから、50年かけて2.7%まで上がってきました。そして、この流れが今後逆向きになるとは考えにくい状況です。この記事では、これまでの経緯を事実ベースで振り返り、海外との比較や国内の数字から今後の見通しを整理します。
- 法定雇用率は、働いている・仕事を探している障がいのある方の割合をもとに、少なくとも5年ごとに見直されます
- 1976年の1.5%から2026年の2.7%へ。2013年以降は引き上げのペースが速くなっています
- フランス6%、ドイツ5%、韓国3.1%(2029年に3.5%へ)と比べると、日本の2.7%はまだ低い水準です
- 数字はどれも「上がる」方向を示しており、当協会は今後も上がっていく可能性が高いと考えています
法定雇用率はどうやって決まるのか
法定雇用率は、国がその時々の数字をもとに計算して決めています。厚生労働省の資料では、算定式は次のように示されています。
(対象障害者である常用労働者の数 + 失業している対象障害者の数)
÷(常用労働者数 + 失業者数)
少なくとも5年ごとに見直すこととされています。
ざっくり言えば、「働いている人と仕事を探している人のうち、障がいのある方がどのくらいの割合を占めているか」をもとにした数字です。つまり、働いている障がいのある方や、仕事を探している障がいのある方が増えれば、法定雇用率も上がる仕組みになっています。
法定雇用率のこれまでの歩み
- 1960年身体障害者雇用促進法が制定民間企業の雇用率は努力義務でした
- 1976年10月雇用義務化・1.5%身体障がいのある方の雇用が義務に。障害者雇用納付金制度も創設
- 1987年法律名が改正「障害者の雇用の促進等に関する法律」に。知的障がいのある方を実雇用率に算定可能に
- 1988年4月1.6%に
- 1998年7月1.8%に知的障がいのある方の雇用が義務化(1997年の法改正)
- 2006年4月精神障がいのある方を算定可能に精神障害者保健福祉手帳の所持者を実雇用率に算定
- 2013年4月2.0%に
- 2018年4月2.2%に精神障がいのある方の雇用が義務化(2013年の法改正)
- 2021年3月2.3%に
- 2024年4月2.5%に
- 2026年7月2.7%に雇用義務のある企業が従業員40人以上から37.5人以上に拡大
(約37年間)
(13年間)
1976年から2013年までの約37年間で上がったのは0.5ポイントでした。それが2013年から2026年までの13年間では0.7ポイント上がっています。特に、精神障がいのある方が雇用義務の対象に加わった2018年以降、引き上げのペースが速くなっていることが分かります。
国・地方公共団体は3.0%、都道府県等の教育委員会は2.9%です。
働く障がいのある方も、確実に増えている
| 年 | 雇用障害者数(民間企業) | 実雇用率 |
|---|---|---|
| 2013年 | 408,947.5人 | 1.76% |
| 2018年 | 534,769.5人 | 2.05% |
| 2025年 | 704,610.0人 | 2.41% |
仕事を探す障がいのある方も増えています。内閣府の「障害者白書(令和7年版)」によると、2023年度のハローワークでの障がいのある方の新規求職申込件数は約24.9万件(前年度比約7%増)、就職件数は約11.1万件(同約8%増)でした。算定式を思い出すと、働いている方も仕事を探している方も増えていることは、法定雇用率を押し上げる方向に働く数字だといえます。
海外の法定雇用率と比べると
国によって「障がい者」の定義や認定の仕組みが異なるため、数字を単純に比べることはできません。
| 国 | 法定雇用率 | 対象企業 | 実際の雇用率など |
|---|---|---|---|
| フランス | 6% | 従業員20人以上 | 3.6%(2023年、直接雇用。50歳以上の加算を含めると4.7%) |
| ドイツ | 5% | 従業員20人以上 | 4.6%(2017年。民間4.1%、公的機関6.5%) |
| 韓国 | 民間3.1%/公的機関3.8% | 従業員50人以上など | 民間を2027年3.3%、2029年3.5%へ、公的機関を4.0%へ引き上げる方針(2025年10月発表) |
| 日本 | 2.7% | 従業員37.5人以上 | 実雇用率2.41%(2025年6月1日時点、当時の法定雇用率2.5%) |
日本は、制度の対象となる障がいのある方の範囲が比較的限られており、法定雇用率もヨーロッパの主要国や韓国より低い水準にあることが分かります。
今後の展望:法定雇用率は上がっていくと考えられます
ここからは、これまでの事実をふまえた当協会の見方です。当協会は、日本の法定雇用率が今後下がることは考えにくく、むしろ上がっていく可能性が高いと考えています。理由は4つあります。
上がる方向の数字がそろっている
就労が大きく伸びている
まだ差がある
すでに始まっている
理由1:算定式の仕組み上、上がる方向の数字がそろっている
法定雇用率は、働いている障がいのある方と、仕事を探している障がいのある方の数をもとに計算されます。雇用障害者数は22年連続で過去最高を更新し、ハローワークへの新規求職申込件数も増えています。この傾向が続けば、次の見直しでも率を押し上げる材料になります。
理由2:精神障がいのある方の就労が大きく伸びている
精神障がいのある方の雇用は、2025年に前年比11.8%増えました。2018年に雇用義務の対象に加わってから、法定雇用率の引き上げペースは速くなっています。精神障がいや発達障がいのある方の就労が広がるほど、この流れは続くと考えられます。
理由3:海外と比べると、まだ差がある
ドイツは5%、フランスは6%、韓国は民間3.1%で、しかも韓国は2029年に3.5%へ引き上げる方針です。障がいの定義に違いはあるものの、日本の2.7%は国際的に見て高い水準とはいえません。政策の対象となる障がいのある方の人口割合も、日本はヨーロッパの主要国の半分以下です。
理由4:制度を広げる議論がすでに始まっている
厚生労働省の「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」の報告を受けて、労働政策審議会の障害者雇用分科会では、2026年4月から、障害者手帳を持たない難病の方の位置づけや、従業員100人以下の企業への障害者雇用納付金の適用拡大などについて議論が進められています。
数字で見る今後の見通し
仮に、2013年から2026年までの引き上げペースがこの先も続くと仮定すると、法定雇用率は2030年代前半に3.0%前後に達する計算になります。これは韓国の現在の民間企業の水準(3.1%)に近い数字です。
これは単純な計算であり、国の予測ではありません。実際の法定雇用率は、そのときの雇用や求職の状況をもとに決まります。ただ、ここまで見てきた数字は、どれも「上がる」方向を示しています。
企業が今から考えておきたいこと
法定雇用率が上がり続けるということは、「今は達成できているから大丈夫」とは言い切れないということです。従業員が増えたときや、次の引き上げのタイミングで、急に不足が生じることもあります。
そのときに慌てて採用を進めても、受け入れる職場の準備ができていなければ、定着にはつながりません。大切なのは、法定雇用率の変化に振り回されない、障がいのある方が長く働ける職場を今のうちからつくっておくことです。そのための土台になるのが、障がい特性への理解です。
当協会は、法定雇用率の引き上げを「負担が増える」ことではなく、障がいのある方が戦力として活躍する職場づくりを進めるきっかけとして捉えることが大切だと考えています。

