「障がいのある方を採用したいけれど、任せられる仕事があるか分からない」
障がい者雇用を進めるとき、多くの企業が最初にぶつかるのが、この悩みではないでしょうか。
「適当な仕事があるか」を
課題に挙げた事業所
同じ課題を挙げた事業所
この記事では、「できる前提」ではなく「できないこともある前提」で仕事を組み立てるという考え方と、業務の切り出し方の具体的な手順をご紹介します。
- 「できる前提」で仕事を渡すと、うまくいかないときに本人も周りも疲れてしまいます
- 「できないこともある」を前提に、得意なことに集中できる形へ仕事を組み立て直します
- 切り出しは 書き出す → 整理する → 照らし合わせる → 小さく始める の4ステップ
- 切り出しは、職場全体の働き方を見直すきっかけにもなります
「できる前提」で仕事を渡すと、誰かが疲れてしまう
仕事を任せるとき、私たちは無意識に「これくらいはできるだろう」という前提を置いています。電話を取りながらメモを取る、状況を見て優先順位を変える、あいまいな指示から意図をくみ取る。多くの職場で当たり前とされていることです。
しかし、障がい特性によっては、こうした「当たり前」がとても難しいことがあります。「できる前提」のまま仕事を渡すと、うまくいかなかったときに、本人は「自分はダメだ」と自信を失い、周りの社員はフォローに追われて疲れてしまいます。
本人の努力不足でも、周りの理解不足でもありません。仕事の渡し方と、本人の特性がかみ合っていないだけなのです。
「できないこともある」を前提にすると見えてくるもの
当協会がおすすめしているのは、「できないこともある」を前提に、仕事を組み立て直すという考え方です。これは、期待しないという意味ではありません。苦手なことを無理に克服させるのではなく、苦手なことは避けられる形にし、得意なことに集中できるようにする、という発想です。
- どうやってできるようにさせるか
- 電話応対と入力をセットで任せる
- 臨機応変な判断を求める
- どうすれば今の力で成果が出せるか
- 入力作業だけを切り出して任せる
- 手順が決まった作業を繰り返し任せる
本人にとっても、周りにとっても、そのほうが長く続けられる働き方になります。
業務の切り出し方 4つのステップ
「総務の仕事」ではなく、「郵便物の仕分け」「備品の在庫確認」「データ入力」「書類のスキャン」のように、一つひとつの作業に分けて書き出します。
作業ごとに「手順が決まっているか」「判断が必要か」「締め切りに追われるか」「人とのやりとりが多いか」を整理します。
本人の特性(得意なこと、苦手なこと、疲れやすい状況など)と作業の特徴を照らし合わせます。本人と話し合いながら、支援機関の情報も参考にします。
確実にできる作業から始め、慣れてきたら少しずつ範囲を広げていきます。
本人の習熟度に応じて業務量を徐々に増やしていくことが挙げられています。
作業の特徴を整理する表の例
| 作業 | 手順が決まっている | 判断が必要 | 人とのやりとり |
|---|---|---|---|
| データ入力 | ◎ | △ | 少ない |
| 郵便物の仕分け | ◎ | ○ | 少ない |
| 電話応対 | △ | ◎ | 多い |
| 来客対応 | △ | ◎ | 多い |
切り出した仕事を「任せきり」にしない
業務を切り出したら、それで終わりではありません。最初のうちは、作業の区切りごとに確認するタイミングを決めておくと、ミスが小さいうちに気づくことができます。また、手順書や完成見本を用意しておくと、本人が迷ったときに一人で確認できます。
「この入力、正確で助かっています」という一言は、本人にとって「ここで役に立てている」という実感になります。その実感が、次の仕事への意欲につながります。
切り出しは、職場全体の働き方を見直すきっかけにもなる
業務の切り出しは、障がいのある社員のためだけのものではありません。仕事を細かく書き出してみると、「この作業は誰がやっても同じ手順でできる」「この作業のために、専門職の時間が取られている」といった、職場全体の課題が見えてくることがあります。切り出した作業を障がいのある社員が担うことで、周りの社員が本来の業務に集中できるようになった、という企業も少なくありません。
土台になるのは「特性への理解」
どの作業を切り出せばよいかは、本人の特性が分かっていなければ判断できません。「障がいがあるから簡単な仕事を」という決め方では、本人の力を生かしきれず、かえってやりがいを奪ってしまうこともあります。

